日本食レストランで起業

 

ドイツで日本食レストランを開店する(1)

megamenu 1 ドイツで起業を夢見る人たちのために

全く無経験の日本の方が海外で日本食レストランを開店することはないでしょうから,ドイツで起業を志すみなさん飲食業界には通じている方々であろうと察します。それでも,やはり知っておきたいのは,労働時間の長さ,そして重要な条件は健康・体力・情熱だということです。

日本食レストランに限りませんが,飲食店のオーナーは全員,超ともいえる労働時間をこなし,私生活を愉しむ余裕は誰も持っていないといっても過言ではありません。だからこそ,自分のレストランで働くこと自体が喜びでなければ長続きはしないし,長労働時間を支えるパートナーが必要です。多くの飲食店では,奥さん,お子さん,友人などに支えられ,共に働いています。そのような仲間と同じ志と信頼関係が保たれなければ,優れた事業計画もいとも簡単に崩れ去ってしまうこともぜひ心に留めておいてほしいと思います。

因みに,ドイツ全国で大小さまざまな13万4千の飲食店がありますが,ほとんどは家族・パートナー経営またはオーナーと雇用者1名という構成です。

ドイツにおける飲食店開業の許可取得と手続き

世界に知られるドイツのマイスター制度による職業の制約も少なくなり,ドイツでは基本的には自由に起業を行える環境に変化しています。
ただ,日本人の場合,ドイツに長年居住している人でなければ,起業援助金や銀行融資を受けることは容易ではありませんので,十分な資金がなければ何も始まりません。
また,外国人は労働許可と滞在許可は必要ですが,日本人のようなEU諸国外の人にとっては,小さな規模のレストランを個人で開店する場合でも有限会社を設立すると許可が取得しやすいようです。500万円ぐらいの資金はいずれにしても必要なので,有限会社法の資本金25000ユーロ(約300万円)の出資者として労働・滞在許可を得て,開店するのが手続き的には問題が少ないと思われます。労働・滞在許可取得の面でいえば有限会社(GmbH)ですが,小規模レストランの会社組織としては GbR が一般的です。仲間2人と立ち上げられ,手続きも簡単で,費用も税金も安いからです。
GmbH は有限責任ながら正式な会社経営。さらに言語も異なる外国で,税金・会計・保険をはじめ,出費は大きくなると思います。それに比較すると,すでにドイツに居住して,職種を問わず自由に就労できる労働許可を取得している人は,少ない資本金で個人として開店できる可能性が高いようです。

ドイツにおける飲食店開業 ー 許可

許可を発行される最も重要なことというか,唯一の項目は「人」と「金」です。これさえあれば許可は取得できます。
「人」というのは,犯罪歴があったり,麻薬患者だったり,ということですので,ドイツでの起業の夢を抱いているほとんどの人は問題ないでしょう。「金」というのは,在ドイツ市民の場合,滞納税金があったり,SCHUFAで借金状況や借金返済でリスク高であると判定された人たちが対象となります。ですから,日本から渡独する人たちは,十分な資本金に加え,計画通り進まない場合に対応できるように,事業計画に沿った資金以上の「金」があれば合格です。
>>> インフォ: SCHUFA とは

あとは,書類の不備などが指摘され,時間がかかるかも知れませんが,詳細な必要書類,書類の内容検査,手数料などは,州ではなく,町・村・自治体によって大きく異なるようです。

ドイツにおける飲食店開業 ー 手続き

circle 180 yakitori飲食店に関しては,アルコールを提供しないのであれば,許可は不要です。営業届け(Gewerbeanmeldung)を提出するだけで開店できます。例えば,ドイツでインビスと呼ばれる,酒を出さない簡易食堂などは飲食店営業許可がなくても開店できます。
アルコール飲料もメニューに含める場合,飲食・接客業の営業許可(Gaststättenkonzession/Gaststättenerlaubnis)の取得は前提条件です。
現実的には,調理も準備も不要な酒類のマージンは大きく,レストランの収益に重要な位置を占めるので,アルコール飲料なしの日本食レストランは考えられません。
酒類を提供する飲食店の営業許可を発行するのは治安局(Ordnungsamt)です。前提条件として,まず商工会議所(IHK)による飲食業セミナーの参加証明書があります。飲食業の専門教育の修了書(精肉,調理師,ホテル業など)を取得している人は免除されます。日本人の場合の免除対象となる証明書については,最寄の商工会議所,治安局,自治体などにお問合せください。

circle 180 rahmen商工会議所主催の飲食業セミナーは通常はわずか数時間で終了し,全員に(治安局に提出する)講義参加証明書が発行されるので,まぁ飲食業許可証自体は誰でも取得できるわけです。ドイツ語力を問われることはありませんが,全くできないと問題になるかも知れないので,あまりボロを出さないようにしてください。

受講料は自治体によって異なり,60~80ユーロ。商工会議所に申し込むと講義日が書面で送付されますので,必ずその日に出席します。申し込み後,講義を受け,受講証明書をもらうまで少なくとも10日間は必要だとお考えください。

circle 180 onigiri許可取得のための詳細については,連邦州や自治体によって多少の違いはあるようです。すでにドイツに居住されているのであれば,まず最寄の商工会議所や自治体に問い合わされることをお奨めします。
許可の取得後でも,規定違反などが発覚した場合は,罰金または免許取消しなどの処分を受けることがあります。
ただ,簡易食堂の開店に許可は不要といっても,食品を扱う限り衛生管理や営業時間などの遵守のために,法規を知っておく必要があり,自治体から商工会議所の受講証明書を要求されたら従う以外にありません。

以下,ドイツで日本食レストランをはじめとする飲食業での起業を考えておられる人たちのために,最初に知っておきたい基本的な開店条件を記してみます。
役所などを廻っている内に何らかの形で書類の不備は発生するので,必要と思われる書類は最初から早めに用意して,同時に物件探しも行いながら,できれば余裕を持った準備期間を設けたほうが良いと思います。
最寄りの町に JETRO などがあれば,相談するのもひとつの方法かも知れません。


「飲食・接客業」の定義

  • その場で消費する飲料の提供(酒類の販売)
  • その場で消費する調理済み食品の提供(食品の販売)
  • 顧客への宿泊の提供(宿泊業)
  • 旅行業・催し物などの一環として,一定時間,その場で消費する調理済み食品や飲料を独自に提供(アイスクリームの移動車販売なども含む)


飲食店営業許可(Gaststättenkonzession)

  • 人間としての信頼性の証明
  • 専門能力の適応性
  • 経済面などの必要条件
  • SWOT 分析

その他の許可と規定

Gewerbeanmeldung: 営業届け
Gaststättenverordnung: 飲食業の規定
Jugendschutzgesetz: 未成年者保護法
Infektionsschutzgesetz: 感染予防法
Hygienevorschriften: 保健衛生規定
Stellplatzverpflichtung: 駐車法
Außengastronomie: 屋外の飲食
Ladenöffnungszeiten: 営業時間
Preisangaben: 価格表示
GEMA & GEZ: 音楽著作権及びテレビ・ラジオ視聴
Kennzeichnungsvorschriften für Lebensmittel: 食品(添加物)表示法

飲食店営業許可(Gaststättenkonzession)


人間としての信頼性の証明

必ず全権を持った自然人の代表者が必要だという意味で,経営上の利益・損失だけではなく,レストランに関する責任を全面的に負う人をいいます。

< 必要書類 >

  • 無犯罪証明書(日本,ドイツ)
  • 営業届け
  • 管轄の税務所発行の証明書(滞納税金などがないこと)
  • 自治体の営業税管轄局の証明書
専門能力の適応性

食品の取扱い及び衛生に関する,商工会議所による講義への参加
管轄の衛生局による第一回目の検査証明書(開店日から3ヶ月以内に提出)

経済・資産関連の必要条件

飲食業の規定に沿った物件の賃貸契約書または売買契約書
飲食店を営業するために十分な広さがあり,設備が整備されている証明(建築証明書,設計図面など)

SWOT 分析

事業計画書です。SWOT 分析の詳細については割愛しますが,一般的には20-30ページ。個人の小規模なレストランならばもっと少なくていいと思います。

次のような基本項目を含めて作成:

  • 開店予定場所,競合他社の分析,市場競争力とチャンス
  • 事業を発展させてゆく詳細計画
    (サービスメニュー,価格の構成,営業日・営業時間,従業員の有無・数など)
  • 投資とファイナンシャルプラン
    (自己資金,借入資本,公的融資など)
  • 開店時点から軌道に乗るまでの経済性のプロセス(予想損益計算)
    (売上,経費,設備購入費,人件費,その他の必要経費)


その他の許可と規定


Gewerbeanmeldung: 営業届け

本職・副職に関わらず飲食店の開店は告示が義務です。自治体に届け出ます。手数料は自治体によって異なります。

Gaststättenverordnung: 飲食業の規定

トイレなどの設備,営業時間の遵守,室内の掃除など
面積や設備など飲食店の規定は多いので,改装などを行う前に,場合によっては以前のレストランを引き継いだ際でも,予め自治体の営業検査官(Gewerbeaufsicht)に相談されることをお奨めします。

Jugendschutzgesetz: 未成年者保護法

酒類を飲める年齢はヨーロッパ諸国内でも,似て非なるものなりで多様です。オーストリアなどは地方ごとに独自に定められています。
ドイツでは16才未満は基本的に飲酒禁止ですが,保護者と一緒のときは14才からお酒を飲めます。しかし飲食店では,アルコール分の強い酒類は,たとえ量が少ない混合飲料であっても18才以上の人でないと提供することはできません。日本食レストランはディスコやパブではないので,厳密に考える必要はないかも知れませんが,身体が大きいコドモはたくさんいます。おかしいと思ったら,年齢を聞くか,場合によっては身分証明書の提示を求めるように,従業員に教育しておくことも大切です。
酒を飲んだ若者よりも,提供した側が罰せられます。

Infektionsschutzgesetz: 感染予防法

厨房だけでなくレストランで就労する人はすべて,食品の感染で発生する症状,感染リスク,従業員の衛生管理に関する知識を持っている必要があります。
従業員および経営者は,セミナーなどを受講して証明書を取得しなければなりません。

Hygienevorschriften: 保健衛生規定

飲食業の保健衛生に関しては,レストランが独自に規定を作成して従業員に遵守させます。HACCP 管理への適応も含まれます。
特に中規模以上の飲食店は,衛生・清掃計画書,食材購入時の管理方法,温度管理,害虫処分の方法,従業員教育などについて,管轄局から定期的にチェックを受けます。

Stellplatzverpflichtung: 駐車法

建物の改築などを行った場合,駐車場や自転車置き場なども併せて変更しなければならないこともあります。

Außengastronomie: 屋外の飲食

レストラン前の道路脇などでの飲食を提供したい場合は,客席数・面積の増加分として特別許可が必要です。特に,50席以上または屋内の客席数の50%以上が屋外に設けられる場合は,建築法に準じた許可も必要となります。

Ladenöffnungszeiten: 営業時間

営業時間は連邦州ごとに異なりますので,各州の規定に準拠します。

Preisangaben: 価格表示

価格が表示されたメニューはテーブルに置いておくか,テーブルに着いた客に提示する必要があります。
勘定の支払い時にも,客の要望があれば,価格が表示されたメニューを改めて提示しなければなりません。
はっきりと読めるのであれば,壁などに表示する方法でも構いません。
また併せて,レストランの入り口または入り口近くに,主要なメニューと価格の表示が必要です。
表示価格は付加価値税(ドイツは19%),サービス料など,全て込みの価格です。
客が使用できる電話などがある場合は,1分あたりまたは1通話あたりの料金を提示します。

GEMA & GEZ: 音楽著作権及びテレビ・ラジオ視聴

GEMA(Gesellschaft für musikalische Aufführungs- und mechanische Vervielfältigungsrechte)はドイツ最大の音楽著作権会社です。レストランなど公共の場で音楽を流す場合はGEMAへの申請が必要です。
GEZ(Gebühreneinzugszentrale)はドイツ公共放送の視聴料の徴収機関です。ラジオ,テレビ,インターネット使用装置などがレストラン内に置かれている場合は,使用の有無を問わず申請が必要です。料金は従業員の数によって異なります。

Kennzeichnungsvorschriften für Lebensmittel: 食品(添加物)表示法

特別な調理(処理)が施された食品および添加物が入った飲料は,その旨,メニューに明示します。

主な添加物

保存剤,着色料,人口甘味料,リン酸塩,乳タンパク質,酸化防止剤,調味料,ヨード塩,キニーネ含有,カフェイン含有など

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