月額わずか9ユーロ。3月中旬にドイツ連立与党政権が発表した,ドイツ全土有効の定期券発行が大きな話題となっています。

エネルギー節約,特に,自動車による通勤を控え,将来引き続き電車・バスによる通勤を促すための試行プロジェクト。

当初は,「ほんまかいな」と半信半疑でしたが,実行準備は進んでいます。ただ,実業務に携わるドイツ鉄道やローカル鉄道・バス会社は準備に必死のようです。

期間は,6月から8月までの3ヶ月間。1枚の切符の値段は9ユーロで誰でも購入可。有効期限は各月の末日です。すでに定期券を所有している人は差額が払い戻しされます。

利用できる交通機関は,遠距離特急のICE,IC,ECおよびFlix鉄道を除く全ての鉄道,電車,バスとなっているので,自宅を出てバスや電車で中央駅に向かい,たとえばRBを利用してケルンから乗り継ぎながらミュンヘンに行き,ミュンヘン市内をバスやS-Bahnで廻ることもできるわけです。

まさにタダも同然。通勤はもとより,時間がある人たちは,遊び,休暇に利用しない手はありません。ひとつの問題を除いては・・

提供者側も最も心配している問題,それは混雑です。

ゆったりした移動に慣れているドイツ人が,全移動を通じて東京のラッシュアワーのような状況に耐えられるかどうか,また事故などが発生しないか,ドイツ鉄道を主とする管理者側は頭を悩ましていると聞きます。

移動する人たちが増えても,臨時列車を出すことは計画されていないようです。

チケット販売は5月末から。オンライン,現在準備中のアプリ,自動販売機,そして駅構内の販売カウンターでも求められる予定。

約3千万人の購入が予想されているので,夏の休暇が始まると大混雑になることは十分考えられます。

わずかの希望は,ドイツは地域によって休暇時期がずれていること。従って,ドイツ旅行を考えている人は,バカンス中の地域を避けながらの移動を計画してください。
ドイツの隣国の人にとってもドイツ旅行のチャンス。

鉄道地図を広げて気ままな旅,または今夜の夜汽車で旅立とうか・・

この試行プロジェクトへの国の予算は25億ユーロ(約3500億円)。しかし,多くの自治体は不足を心配しています。

ガスや原油のエネルギー不足への対策もありますが,環境保全の目標値を達成するために,公共交通機関の利用者を2030年までに現在の2倍に増やすことが目的。

3ヶ月間のタダ乗りが終わったら,また自家用車で無料アウトバーンを高速で走り,排ガスを撒き散らす,もとの木阿弥に戻らないことを願っています。