改めて気になる一言。

「あの人はちょっと経済に弱い感じがしますけどね・・」

数年前,なにかのテレビ番組でゴルバチョフ氏のことがテーマになっていた。出演していたアンゲラ・メアケル元ドイツ首相がちょっと付け加えたこの一言がまだ心にひっかかっている。

自分は共産圏の価値感からきちんと抜け出して自由民主主義のなかでリーダーになったけれども,それも経済あってのこと。私はそれをよく分かっている,と言いたいのではないかと僕は皮肉った理解をした。

素人の意見になるけれども,ペレストロイカ時のソ連経済の困難さは東西ドイツ統一時の比ではなかったのではないか。

「全面的に助ける」とゴルバチョフに語りかけながら,ソ連の弱体化とそれによる東ドイツの揺れは東西ドイツ統一の絶好のチャンス,とばかりに,「金ですむことなら」と自分のキャリアの最後を飾れることにも有頂天になっていた元コール首相。

果たして約束どおり,全面的に助けたのか,経済援助をしたのか,知らないけれども,あまりに早く進み過ぎたので時間が足りなかったのかもしれない。

同時に,1989年,壁が崩れる直前に天安門事件が起こったので,類似した事故が起こってしまうと西欧にとって1953年6月17日に続く歴史的な汚点になるという危惧も抑制力になっただろう。

いずれにしても,ホーネッカー政権の弱体化や西欧諸国の政治的承諾があったにせよ,東西ドイツ統一はコール首相がいなくても実現したかもしれないけれども,ゴルバチョフなくして実現できなかったことは間違いない。

もし,ゴルバチョフ政権とペレストロイカが生き延びていたら・・・

ドイツ人には東西ドイツ統一の最大の恩人であるゴルバチョフ氏に感謝の意を込めて合掌してほしいけれども,現状況では葬儀への参加もままならないらしい。

 

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