サノバという音楽は,サンバと並び,ブラジルには昔からある音楽だと思っていました。
1960年代に初めて聴いて以来,それほど夢中にはならなくても,飽きることはない優しい音楽,ボサノバ。
でも,セルジオ・メンデスのようなテンポの速い曲はともかく,ギター1本だけの静かなボサノバなら自分でも弾けるかなと思ったのは不覚だった。30年以上も前に,「ボサノバを習いたい」と言ったら,「まずこれを徹底的に練習しなさい」と教わった曲 "Chega De Saudade"。

練習したけど全然ダメ。諦めて,また思い直して頑張って,またがっかりの連続・・・簡単そうなんだけどなぁ。
自分が弾けないくせに他人を批評するのは気が引けるけれども,日本人のボサノバ風の曲(歌)を「ボサノバだ!」と思ったことはない。あくまでもボサノバ風。荒井由美さんのようなヒット曲にしても,風をつけざるを得ない。
なんというのかなぁ。お腹の中でリズムがわずかに引っ込んで,ひとつひとつのテンポがわずかに遅れる微妙な感じを自然に出すのは,アジア系の人種にはほぼ無理なような気がする。

joao gilberto tagesschau w370h280ところで,この "Chega De Saudade" を作詞・作曲・演奏・歌唱したシンガーソングライター,ジョアン・ジルベルト(João Gilberto)が88歳で死去したニュースが流れ,その中でボサノバの創始者だという説明がありました。

若い頃からプロのミュージシャンを目指していたジョアン・ジルベルト。失敗の連続で意気消沈状態が続き,ある日,女性友達の家のバスルームに何時間も引きこもってギターを引き続ける中,ふとスタイルが生まれ,興奮したという逸話は聞いていたのですが,ボサノバというジャンルを発明・確立したのは,アントニオ・カルロス・ジョビンだと思っていたのです。

それはともかく,ブラジルでは,ボサノバは古い世代が好むノスタルジーだけのダサい音楽だと思われている部分もあるそうです。
ということは,ジョアン・ジルベルトの死と共に,徐々にブラジル人の心からも離れていくのかもしれません。
ならば,良かった,良い時代に生まれ育って。
ブラジル人のDNAにはとても近づけないけれども,いつかぼくの人生の最後の意識が徐々に弱まり,無意識になり,息を引き取るまで,身体の中でボサノバのリズムが刻み続けられるのはほぼ確かですから。


https://www.youtube.com/watch?v=EQC4Ye7hr9Y

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