旅先の一宿一飯

最後の Chambres d'Hôtes

hotel W600H400 1ベルを問わず,ホテルをインターネットで探すことが,旅行計画の当然の行動になっている人たちは何とも思わないかもしれないけれど,旅先で家庭的な一宿一飯を望む旅人にとっては厳しい時代になってきた。

最初に来たのがフランスだったせいか,Chambres d'Hôtes に対する思い入れはことのほか大きい。
一生お金持ちになることはないだろうけれども,なったとしてもフランスならば,宿泊先はできる限り Chambres d'Hôtes から探すと思う。
日本語ならば,というか日本語化した英語ならばペンション。家族経営だけど民宿ともちょっと違う感じだ。
フランスの宿泊施設の形態として,戦後まもなく法律で定められ,名称や形としては現在でも約4万軒がフランス全土にあるようだ。

hotel W600H400 4知らない町や田舎に行ったら,カフェ・レストランで部屋を聞いたらいいとフランス人に教えられた。おどおどとしたフランス語で「部屋はありますか」と尋ねると,「ここの階段を上がったらいくつか部屋があるよ。気に入ったらどこでもいいよ。値段は朝食付きでXXXフラン」と,カウンター越しに重いキーの束を渡された。
ダブルベッドに巨大なアンティックのような洋服棚が置かれているのに,まだまだ大きな余裕の広さ。この,初めて挑戦した,地元のカフェバーでの行きあたりばったりの部屋探しが大成功だったため,その後も何度か行く先の見知らぬバーで空き部屋を得た。ときどき外れもあったけど,失望したことはない。とにかく値段がユースホステルと同じぐらいだから,質を望むほうがおかしい。
ドイツでは幾度か失望した。以降,ドイツでは町ならばホテル,田舎ならばペンションに相当する "Zimmer Frei" をあたることにしている。

hotel W600H450 1聞くところによると,最近のフランスでは Chambres d'Hôtes を老後の不動産投資として購入するよそ者裕福層が増え,部屋の管理などは雇い人がしている場合が多く,値段も上がり,家庭的な雰囲気は望むべくもないらしい。
でも数年前に廻ったノルマンディーとブルターニュ地方の Chambres d'Hôtes はすべて素晴らしかった。
ただこれらの宿は,Chambres d'Hôtes à la ferme という名称が付いていた。
「ケーキを焼いたのでお茶でもいかがですか」と隣りのオーナー宅に招待され,子どもたちと一緒にお茶とお菓子をいただいたこともある。また,領主の館のような庭にはニホンジカがいて,オーナーが「Shika Shika,Viens Shika」と自慢していた館に宿泊したこともある。
運が良かったのか,田舎ならいいのか,観光客が来ないところがいいのか,はっきりとは分からない。
ただ,家庭的で素朴な Chambres d'Hôtes は消滅に近づきつつあるのは事実だろう。