週間前のオンライン日経に,カンヌ映画祭で受賞した日本人監督に併せ,黒澤明監督の「羅生門」を見た大映の社長が「わけがわからん」と言ったとかいうエピソードが書かれていました。

palais de chaillot w1280黒澤さんといえば,1970年代初旬,パリのシャイヨー宮の端にあったシネマテックのプログラムのひとつだった「羅生門」の上映前に奥様と一緒に現れ,最前席に座られて観客と共に鑑賞されたことがあります。
上映前に羅生門について来場者に語られましたが内容はあまり覚えていません。

それまで想像していた厳しく怖い天皇像とは異なり,長身のスマートな姿と落ち着いた語りぶりがとても印象的で,プロも多い映画ファン観客が黒澤さんに向けていた敬意の空気が感じられたのを覚えています。

シネマテックでは昔の世界の名画が主に上映されるので,有名な役者さんの姿もよく見ました。
その頃パリの街中で上映されていた「どですかでん」も,地味ながら静かな話題になっていたようで,若い女の子たちが結構多く,とても褒めていたのが印象的且つ意外でした。日本では「どですかでん」の不発ニュースと共に,黒澤さんの凋落のような批評まで書かれていたようなので。

ところで,「わけがわからん」というのは黒澤さん自身も吐いているのです。記憶が正しければ,黒澤さんは息子の久雄さんに勧められて映画「Scarecrow」を一緒に見た後,「わけがわからん,それに最近の映画はテンポが速すぎる」とこぼしていた,と久雄さんが何かの雑誌で語っていました。
余談ですが,ぼくはスケアクローで初めて見たアル・パシーノを「あっ,ダスティン・ホフマンの真似してるな」と思ったものです。

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