whales japan Sddeutsche.de 2015 12 012015年11月30日:
今日のニュースを見聞きした欧州の市民は思っているかも知れません。「またまた悪名高い日本のクジラのニュースがやって来た」と。ドイツだけではなく,少なくとも,スイス,オーストリア,英国などの主要メディアは,日本の捕鯨再開のニュースを大きく取り上げていました。いつも同じような解説が付けられます。「・・・学術研究と調査を目的に捕鯨数をXXX頭に制限する・・・しかし最終的に食品として市場に流れているのは周知の事実で・・・」
他のニュース・トピックスと変わらない中立的な説明ですが,やはり行間に「困ったもんだ,いつになったら分別をわきまえるようになってくれるんだろうか」という感情がみえみえです。

ジャパン バッシング?

12月1日/12月2日:
3日続けて同じニュース,BBC(英国),ドイツ国営放送局ARD/ZDFも !?

1年の休止期間をおいて日本は火曜日から再び捕鯨を開始する。日本の公式発表によると,3月末までに300頭以上のクジラを殺す必要があると云う。これを受け,世界中から改めて激しい抗議の声が上がっている。国際司法裁判所には2014年に捕鯨終了の文書が出されており,国際捕鯨委員会は日本に捕鯨を行う理由は無いとした上で,今年の4月現在捕鯨の理由を提出していないことを批判していた。一方,日本政府は,昨年すでに2015年,2016年は捕鯨を再開することを予告しており,捕鯨スケジュールも期日通り提出していることを発表。

このような海外の報道姿勢を見ると,ジャパンバッシングだと,やや憤る日本人も多いかもしれませんが,これが世界の世論であることは認識してほしいと思います。

日本帝国大使館前のデモ

1980年代の初めごろだったか,廃墟同然となっていたベルリンの旧日本帝国大使館前の狭い道で,日本の捕鯨に反対するデモが行われていました。
当時は人も車もほとんど通らない寂れた道でしたが,参加者にとってはアピールする最適なロケーションだったのか,ひょっとすると日本の皇室か,総理大臣級のVIPが訪問していたのかも知れません。残念ながら記憶にありません。しかし,1990年ごろだったか,現天皇陛下が訪独された折,デュッセルドルフ市でも日本総領事館の前で捕鯨国日本を糾弾する大きな風船を上げたデモがあったのを覚えています。そのときは,天皇陛下の訪独に合わせて日本を悪者扱いするデモではなく,なぜ捕鯨に反対なのかを説明したビラでも配布する方法をとって欲しいという憤りを少し感じました。

イルカ,クジラは人間の友だち

1980年ごろ,ロンドンに住んでいる友人を訪ねたとき,彼が「イルカやクジラは,人間,特に子どもたちがとても愛着を感じている友だちみたいなもんなんだよ」と言っていた言葉がなぜか頭に残りました。ドイツの日本領事館などで,ドイツ語や英語で書かれた「日本の捕鯨活動について(タイトル不明)」というような小冊子を見たこともありますので,日本としては海外に向けた説明の努力はしているようです。しかしどれほどの外国人がその情報を読んでいるのか,ましてや納得しているかについてはとても疑わしい感じがします。
いずれにしても,欧州の現在の子どもたちはもちろん,ほとんどの大人たちも幼いころから「人間の友だち,クジラとイクラ」の話を見聞きしているので,日本人にとってのパンダや犬猫と同じだと考えてもいいと思います。

クジラは美味・珍味

「クジラはどんな味がするの? クジラってそんなに美味しいの? 日本では一般的なご馳走なの?」
よく聞かれる質問です。悲しいかな,はっきりいって知りません。幼い頃,佃煮の木箱の片隅に少し入っていた角煮しか知らない僕は例外なのでしょうか。
デュッセルドルフでは毎年,日本デーと呼ばれる日本祭りが大々的に催されるのですが,昨年は「日本の食」がテーマでした。メディアへの発表説明会でドイツ人ジャーナリストが「クジラ料理なども出るのでしょうか」と質問。一瞬の沈黙の後,デュッセルドルフ市長も困惑した様子。市長に「どうなの?」と聞かれた観光局長も答えに答えられず,笑って誤魔化していたことがありました。
欧州では,「日本にはクジラ料理を好む裕福な美食家が多いから,裏金を使ってでも捕鯨を継続させるロビーが強力なのだ」と信じている人たちが多いのです。

欧州では許されない「活き造り」

魚の活き造りといえば,和食の板さんにとっては腕の見せ所,客にとっては新鮮な魚を味わう最高の料理かも知れませんが,魚への思い入れを抜きにしても欧州では考えられない食卓です。アジア人は「食」に対するこだわりが強いことは事実ですが,それよりも欧州では「生き物」,「いのち」に対する心構えの教育が長年行われてきたような気がします。それで,日本を少しでも知っている人たちは,日本人の自然や草木に対する愛情を,西欧人が見習わなければならない高い人間性としてとても尊敬するのです。
日本に旅行した西欧人が活き造りに対してどのような反応を示すかは分かりませんが,捕鯨の問題は日本を少し知る人たちにとっては意外な失望,日本好きの人たちにとってはとても歯がゆいジレンマを生み出すのです。

日本のイメージダウンと日本人の不思議

日本の捕鯨について詳しく調べたり,捕鯨自体の是非について議論することには僕はあまり興味はありません。しかし,海外に住んでいる限り,欧州人と接して話題が日本のことになった場合のトップ10ぐらいにクジラは入ります。そして,いつも日本の捕鯨に関して否定的な意見を聞かされます。ほとんどの場合は,捕鯨自体に関する否定ではなく,日本(政府)側の説明や論理に説得力,透明性が欠けているというのが,その否定的な意見の理由です。欧州のメディア報道に犯されているといえば,それまでですが,日本に住んでいる日本の人たちにはなぜかそういう状況を分かってもらえません。そういう状況とは何か? 少なくとも欧州では,ほとんどの人たちが日本の捕鯨を認めていない,認めたくない,ということです。30年以上も経って凝り固まっている,先入観かも知れない感情に立ち向かう意義はどこにあるのでしょうか?
とてつもないイメージダウンです。繰り返しますが,とてつもない日本のイメージダウンです。今まで過激的な抗議デモが起こったことがないと安心するのは禁物です。イメージダウンの裏では(日本・日本人に対する)不信感が大きくなっているのです。
マーケティング会社か広告代理店にでも,意義から得られるプラス面とイメージダウンで失うマイナス面を調べてもらい,貨幣にでも換算して発表して欲しいものです。イメージダウンで失う経済的な損失が数値で見えると考えが変わるかも知れませんから。

司馬遼太郎さんが語られていた言葉を思い出します,記憶が定かではありませんが。
「日本もそろそろ世界の組合と足を揃えなきゃねぇ」
捕鯨しかり,死刑しかり,原子力発電所しかり,価値観の違いなのでしょうか?

プログラム提供元: CComment