EU委員会の委員長がドイツ女性に?

ドイツの現国防省,フォン・デア・ライエン女史が,(十分な支持を得られなかった)マンフレッド・ヴェーバー(CSU)に代わり,欧州議会の次期委員長候補としてドイツ政府から正式に推薦されました。
国際的で英語も達者で頭の良い母親。CDUの政界だけではなく,幅広い層から一目置かれている人なので「最適な人材」という気がしないではないのですが,個人的には政治の世界の醜い戦いとドイツの傲慢さをどうしても感じてしまいます。

vonderleyen spiegel

フォン・デア・ライエン氏自身について批評するようなことはありません。
聡明で素晴らしい政治家だと思います。
ただ,政界ではもちろんのこと,欧州全体でも知識層には認められている人かもしれませんが,一般の人たちにとっては彼女は「ドイツの女性大臣」という以外の認識はないのです。
ただでさえ,英国が抜けると,さらにドイツが欧州のボスとして,ドイツの正義や倫理を威圧的に欧州人に強要してくるのではないかという静かな不安が欧州全体に広がりつつある現在,なぜドイツ人がトップに来る必要があるのでしょうか。
また,お前は政治音痴だなぁという声が聞こえてくるかもしれません。
自分でもつくづく「政治と政界」というものをしらない気がします。

それでも敢えて,小さな声ながら,警告として言っておきたいと思うのです。
ドイツは,というか,特にCDUは前回の選挙で国民から大量の支持を失ったのに,離れていった元CDU支持者の気持ちを知ろうとはせず,改めて自称民主主義のためにCDUの立ち直りに向かっているとしか思えません。
本来ならば,文化も価値感も異なる欧州圏外のルーツを持った欧州人が増えつつある中,ヨーロッパの隅々にまで気を配ることがEUの持続に最も重要なはずです。
そして,フォン・デア・ライエン氏は,それらの多様な課題を解決する才能を備えた人だと思います。

でも,彼女はドイツ人なのです。
また,筋金入りのキリスト教民主同盟の人間なのです。

欧州議会の内部だけならば,政治の争いだけの話かもしれませんが,5億人以上のヨーロッパ人にとっては,「ドイツ人とフランス人がトップにいるから,ドイツ・フランス・ファーストを考えているに違いない」という意識が深くあることは間違いありません。
アメリカだけではなくドイツ,そして多くの国における「自分たちを分かってくれない」という現象は似ています。
マクロン政権に反旗を翻しているフランスの「黄色いチョッキ運動」なども,インテリ主導の政治への不信,さらには根拠無きインテリへの不信にあることは間違いないでしょう。

その点,現在のドナルド・タスク欧州議長は幅広い層から支持を得ているはずです。
人間性や政治家としての優秀さもさることながら,ドイツ人でもフランス人でもないポーランド人であることは大きなメリットだと思います。
さらに,母国ポーランドの政権を代表していないどころか,現在の母国では危険人物でもあるので,国益を図ることはなく,ヨーロッパ人として職務に就いているという信頼性を得ていることは確かでしょう。
直接的な説明はなくても,民主主義が基本的な鉄則であることを欧州全体に向かって訴えていることが,アクセントの強い英語でひしひしと伝わってきます。

アクセントもなく,流暢な英語(おそらくフランス語も)を話すドイツのインテリ女性がイニシアチブを取る欧州連合が,自分たちの気持ちを理解してくれる上部組織ではない,として人々の心が離れ,さらにはドイツ国旗が焼かれ,それみたことかとドイツのネオナチや極右組織がさらに騒ぎ始めることが危惧に終わればいいのですが・・・

プログラム提供元: CComment