ドイツのふしぎ


ドイツ好きの人たちと話をすると,ドイツという国やドイツ人の良さについていくつもの説明を受け,嫌な点については「ちょっと頑固だねぇ,真面目すぎることもあるね」など,柔らかい口調になります。でも,長年眺めていると,いつまでたっても理解に苦しむことがあります。あれほどゴミ処理や廃棄物の分別をきちんとする人たちが,なぜ犬の散歩で公道の糞の処理をしないのか,ということなどもひとつです。

今回は,なぜ毎日毎日,2つの放送局が同じニュースを同じ解説と同じ演出で放映するのだろうか,という,ひょっとして筆者だけかも知れない疑問です。2倍の金がかかるのに ;-(

ARD ZDF logo個性に欠けるドイツ第一放送局 ARD と第二放送局 ZDF

ひとつの国に複数の公共放送局が存在することは,それほど不思議とはいえないかも知れません。少し説明しますと,ドイツの第一放送局である ARD と第二放送局の ZDF はそれぞれ独立した組織ですので,日本の NHK の第一・第二とは異なります。なぜ第二放送が生まれたのか,についてははっきりとは分かりませんが,アデナウアーが引き金だったようです。基本法では政治とメディアの独立が保証されているにもかかわらず,アデナウアーはキリスト教連盟(CDU)の新たな放送局の設立を試みます。SPDがドイツ憲法裁判所に訴訟を起こし,結果的には1961年,却下されるのですが,これをきっかけにもうひとつの中立放送局の必要性がドイツの複数の連邦州から強く叫ばれます。ナチス時代のメディアの無力または完全統制を考えると,多くの連邦州がドイツ政府のメディアへの介入禁止だけでは不十分であると,アデナウアー事件を境に,真剣に考え始めたのではないでしょうか。「第二」という名称を放送局に用いることには議論があり,いろいろな名称が提案されましたが,結局第二放送局に落ち着き,1963年に正式に放送を開始した,というのが経過です。

ここまでは不思議でもなんでもないのですが,個人的に疑問に思い続けているのは,まず何故ニュース番組が同じ内容,同じコメント,同じ構成(アナウンサー,スタジオセットなど)なのかということです。毎日のニュースで取り上げられるトピックスは,ドイツに限らず,どこの放送局でもある程度似ているのは納得できますが,ここまで同じならば「徴収」金の無駄使いじゃないか,と思うのです。ニュース番組に関して云えば,ZDF が勝っているという視聴率の差は,マリエッタ・スロンカやクラウス・クレーバーなどのスター的なアナウンサーの存在なしには考えられない。まぁそれだけの話なのです。

ジャーナリズムへの姿勢

しかし,BBC などを見てしまうと,ドイツの放映番組は明らかに見劣りがする,せめて,ARD/ZDF には頑張ってほしいと思いつつも・・・
私個人の評は BBC の圧勝。BBC も予算が苦しく,英国政府ともめ,人員削減を強いられているとも聞きます。それではなおさら,(どうせ同じニュースを流している)ドイツの公共放送局がひとつにまとまれば,倍の予算を質の向上に当てられるじゃないか,と思ってしまうのです。

公共放送局が国民の金を使ってどのような番組を制作するかについては,視聴者の好みに左右するので一概には言えませんが,BBC のニュース,ドキュメンタリー,文化などの番組放送時間は ARD/ZDF の約5倍だそうです。代わりに,高コストがかかるスポーツの放映時間はドイツが10倍以上,独英バイリンガルのブロガー Barnabas Crocker によると,彼が調べた1週間のスポーツ放映時間は BBC が75分,ARD/ZDF は10時間だったそうです。
定かではありませんが,英国では,スポーツなど莫大な放映料金がかかる国民的な番組は民営放送局に委ね,BBC は世界で最も優れたジャーナリズムと世界人の教育に寄与するという明確な方針と志だと思います。

見えない金の使い道

ご存知のように,2015年から公共放送の視聴料金が一律になり,これまで複数の機器に多額を支払っている人は安くなったことを喜んでおられるかも知れません。ところが,やっぱりというか,値上げに代わる徴収金の増額のために,試行錯誤を繰り返した結果だったのです。今回の徴収方法の変更の結果,これから4年間で12-15億ユーロの増額が見込まれているそうです。徴収した金額がすべて公共放送局に割り当てられるわけではなく,一部は必要時の積立金として置いておくそうですが,ARD はすでに2017年から2020年までの予算が不足することが予想されるため,10億ユーロ単位の増額申請を出しています。

Tagesschau, Tagesthemen, Heute, Heute Journal など,多くのニュース番組は独立して制作しているそうです。せめて,同じ放送局内のニュース番組ぐらい共同制作でもいいような気が素人にはしますが。スタジオ設備なども,欧州諸国のニュース番組と比較すると,ハードに多くの金をかけているのが分かります。ニュースのスタジオなど,オーストリア,フランス,スイスなどのように,質素で全く構わないのですが。

>>> ドイツのふしぎ - 犬の糞

プログラム提供元: CComment