fifa2006アジアの国々からの票を獲得することが危うく,ドイツでの実現の見通しは明るくなかった2006年のワールドカップ。ドイツのサッカー世界選手権招致委員会会長,ベッケンバウアーは1年以上前から世界中を駆け巡り,2006年サッカー世界選手権大会のドイツ開催に向けて関係者への説得を続けていた。そして,1票の差(12票対11票)で南アに勝ってドイツに決定。 一般の人々はもちろん,スポーツ関係者もベッケンバウアーの尽力と任務の遂行を称える言葉を惜しまなかった。ドイツ人が,戦後おそらく初めて,後ろめたさを感じることなく,ドイツの国旗を上げる最良の機会ともなり,ドイツ中が湧き上がった。

以前からFIFA周辺での黒い金の動き,ブラター会長が手を出す賄賂が問題視されながら証拠を挙げることはできなかった。そして,先週ブラターが追放同然の処置を受けたのはご存知の通り。同じように当時のドイツ決定に際しても「金が動いたのでは?」という疑惑は少なからずあったが,実証できないままだった。

ルイ・ドレフュスは何者?

ワールドカップ2006のスキャンダルを暴いたのは,2年の月日をかけてドキュメントを調べたというシュピーゲル誌。同誌によるとルイ・ドレフュスが影の男。当時,ドイツのサッカー世界選手権招致委員会から1300万スイスフランが流れたといい,この金額を提供したのが,金と有名人を自由に非情に使いこなす男としても知られ,2009年に白血病で亡くなったルイ・ドレフュス。

アディダスを立て直したロベール・ルイ・ドレフュス

アディダスが経営困難に陥っていた1993年,アディダス会長に就任したフランス人,ルイ・ドレフュス。すでに世界トップクラスの製薬会社や広告代理店などの事業改革を次々に行い名声を得ていたルイ・ドレフュス。アディダスでも手腕を発揮。管理職の大半を解雇して,製品のファッション化,製造拠点のアジアへの移転など,矢継ぎ早の改革を実行。2001年にルイ・ドレフュスがアディダスを去ったとき,すでにアディダスは新たな世界トップメーカー,スポーツ製品の巨人としての地位を取り戻していた。

ルイ・ドレフュスとフーネスの関係

現在,刑務所で服役中の前バイエルン・サッカー協会会長のフーネスとも親交以上の付き合いがあり,ドイツの世界選手権大会が決定された2000年,ルイ・ドレフュスはバイエルン再出発の祝い金として2千万マルクをフーネスにポケットマネーから出している。フーネスにアメリカでギャンブルの面白さを教えたのもルイ・ドレフュス。プライベートなご祝儀の1年後,フーネスはFCバイエルンのスポンサーをナイクからアディダスに切り替える。スポンサリング料金はナイクの方が明らかに高かったので,変更理由を問われたが,フーネスはルイ・ドレフュスとの関係は否定している。サッカーの熱狂的なファンだったルイ・ドレフュスは,フランスのマルセイユのファンでもあり,南ドイツにFCバイエルンあり,南フランスにマルセイユあり,としてFCマルセイユ・チームのためにも金脈を駆使して選手を獲得した。
ロシア生まれの未亡人,マーガリタ・ルイ・ドレフュスはフランスで最も裕福なひとり。家族の財産はほぼ50億ユーロで,マルセイユ・オリンピックの際もニコラス・サルコジィ前フランス大統領と共に舞台に立っていた。

苦境に立つベッケンバウアー

2006年のサッカー世界選手権大会決定に向け,実際に金が流れたのか,その金がどこからかアジア人の委員に渡されたのかまだ実証はない。でも,通常の月曜発行を繰り上げて土曜日(10月17日)に発売されるシュピーゲル誌に書いてあるかも知れません ;-) いずれにせよ,ドイツ招致委員会の会長だったベッケンバウアーが知らないはずはないし,知っていたとしても,万が一知らなかったとしても問題から逃れることはできない。 フォルクスワーゲンの「メイド・イン・ジャーマニー」問題に続き,他国の賄賂の非難を続けてきたドイツ人の倫理感も新たに問われる。それとも,カタールの賄賂疑惑もほぼ確実となっている現在,「あぁ,やっぱりね」と驚く人たちは少ないかも知れない。 因みに,このスキャンダル・ニュース,昨夜(10月16日)のZDFニュースで知ったので書いたのですが,オンラインニュースで取り上げているのはシュピーゲルを除くとほんの2-3誌。シュピーゲル誌の特ダネで情報が不足しているのか,信頼性に欠けると判断しているのか分かりません。 写真のシュピーゲル誌の見出しは「崩れ去った夏の夢(童話)」 P.S.: ベッケンバウアーがメディアに説明したという昨夜(10月18日)のニュースによると,ベッケンバウアーは知らなかったのではなく,「自分も含め,ドイツ世界選手権招致委員会のメンバーは誰も一切の裏金を動かしていないことを知っている」そうです。

黙り込むほど疑われる疑惑

10月25日。ドイツサッカー連盟からはっきりした釈明がなされないまま10日過ぎ,ニアースバッハ会長の言動には明らかに説得力がない。670万ユーロはコミッションとしてFIFAに払わずにはいられなかったと説明するニアーズバッハ会長。そんな金は受け取っていないと言うFIFA。まさに,ひとつの大きな嘘がばれたために,次の嘘をつかざるを得ない泥沼の様相を浴びてきた感じがします。テレビを(ぼんやりと)見ていたら,ドイツサッカー連盟の前事務局長,H.R.シュミット氏が話していました。 「金のことは私は分かりません。私がニアーズバッハ会長に一緒に相談しようと呼びかけても反応はありませんでしたが,彼は嘘を言っていると思います。どんな細かいことまでよく覚えている,非常に記憶力のある彼が "私は覚えていない" ということはちょっと考えられませんからね。まぁそれとですね。ドイツが大会の開催国になることにそれほど積極的でなかったのならば問題はありませんが,開催したいのであればどうしてもFIFAと交渉しなければならないわけです。ところが,このFIFAというのは一筋縄ではいかない強力な組織なのです。ベッケンバウアーはとても誠実な紳士です。彼のような人間にとって,非常にやりにくい相手であったであろうことは想像できます。そして鍵を握っていた4人のアジア人とFIFAが金をちらつかせていたとしたら・・・」

初めてベッケンバウアーが発言,しかし・・・

10月26日。調停委員会の前でベッケンバウアーが初めて発言,過ちを認めた。FIFAから援助金を受け取る条件としてまず670万ユーロをFIFAに支払わなければならず,ドレフュスからの支払い申し出を受けたことは間違いだっと思う。しかし,票を得るために裏金を渡すことはしていない・・・そうです。しかし,ブラター前FIFA会長は「FIFAがベッケンバウアーに金の支払い要求をしたことは,絶対に,一度もありません」。

クールな天皇の限界?

beckenbauer wmscandalDFBドイツサッカー連盟ニアスバッハ会長(Wolfgang Niersbach)の辞任後もクールに黙認を保っているベッケンバウアーも契約書の存在がはっきりしたことで釈明を避けられなくなった。数多くの賄賂がすでに証明されている世界サッカー連盟の黒幕,ジャック・ワーナーと取り交わした契約書が発見され,日付は奇しくもワールドカップ決定日の4日前,契約書にはベッケンバウアーとラードマン(役員)の署名が押されていた。辞任したニアスバッハ会長は契約書の存在を知ったのは去る8月だと述べている。実際に契約書に沿った支払いがなされたかどうかはまだ不明だが,ドイツサッカー連盟が15年間隠蔽していたことは事実で,ニアスバッハ会長の辞任劇はほんの始まり,クールなベッケンバウアー天皇ももう沈黙は保てない。 11月21日: ベッケンバウアーが南ドイツ新聞のインタビューに応じた。「署名ということについては,自分は署名を求められたら信頼して内容を確認することなく行っていたから,問題になっている契約書についても知らない。金の支払いにも関係していないので,スキャンダルに関して説明する気はない。」 3時間に渡ったインタビューを通して分かったのは,どうやらベッケンバウアーは千単位の書類にメクラサインしていたこと。多くのスポーツマンのように,良くいえば悠然として細かいことにこだわらない性格,悪く言えば能天気ということか。250万スイスフランが動いたことについても全く気にした様子はなく,興味もないという。実際,彼は何も知らないことがはっきりした。ただ,ワールドカップを買収したかどうかについては,そんなことは絶対にない,と,改めてはっきりと強調した。

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