パトカーが車を追跡しながら,平原の途中で諦めて引き返す。アメリカのハイウェイパトロールやFBIのテレビ番組でよく出てきたシーンです。
ベルリンのテロを起こした犯人が,複数の偽称の身分証明証を利用してドイツの至るところで難民支給を得ながら,小犯罪を繰り返していた記録が各州,特にNRW州の警察に保存されていながらテロを防げなかったことで州内務省や警察が非難を浴びていました。
そして昨日(3月27日),公務員の責任はほとんどない調査結果が発表され,警察も一応顔を保った形です。
一昨年から急増し始めた難民の対応に各州が足並みを揃えるどころか,協力体制もなかなか敷けない状況に首をかしげていた人たちも多いのではないでしょうか。

ドイツ連邦警察と州警察

ransomware w640ひと月ほど前にデメジエール大臣が,テロの事前防止策も含め,ドイツ国内の警察間における統括された情報交換の実施発表を聞き,「えっ!,今まではなかったの?」と驚いたのですが,実はその後,多くの州からの反発があったようです。犯罪対処は州の管轄業務という認識が強く,いかにドイツ刑事局の本部からの意向であっても州は従う必要もないわけです。

実際には1972年以来,ドイツだけではなく,ヨーロッパ諸国間の犯罪網を突き止めるための情報交換システムの構築は徐々に行ってきた経過はあるのですが,詳細部分では国や州の政策や予算と相容れない多くの問題に遮られています。

ドイツに16ある各州で用いられているコンピュータのOS,使用ソフト,ネットワークシステムは様々で,他の州や国のシステムと互換性すらないことが多いのです。これまで多額の予算を組んで最良のシステムを構築してきた州のプライドは高く,国が統一システムを望んでも,品質に対して反対する州,現在のシステム変更にかかる費用がネックとなって乗り気にならない州など,実現への壁は高いようです。

ドイツ連邦刑事局(BDK: Bundes Deutscher Kriminalbeamter)によると,ドイツ16州の内,現在8州が新たなソフトを試験中ですが,7州は空き巣対策に限定しての利用。最近5年間で3割も上昇した空き巣や押入り強盗の犯罪は深刻で,保険会社の支払額も毎年増えていることを考えると当然とも云えます。

因みに,バイエルン州は最近バーデン・ヴュルテンベルク州との共同開発とネットワークを始めていますが,自分たちのシステムが最高なのでドイツ政府がバイエルンのシステムの導入するよう促しています。例えば,ある人物を盗聴していて,その瞬間に別の場所の電話が鳴った場合など,両方の場所の警察に通報され,両警察がリアルタイムで対処方法について話し合えるようにしています。また,昨年の秋からアンチ・テロ・データと呼ばれるシステムと標準の犯罪記録システムが結合されています。

にもかかわらず,今回のテロの例で説明すると,テロを起こす可能性がある軽犯罪者としてノルトライン・ヴェストファーレン州(NRW)警察のコンピュータに記録されながら,230万ユーロ(約2億5千万円)かけて構築された全ドイツ警察ネットワーク(仮のシステム)に彼のデータを載せなかった。ベルリン警察は他の州の警察の犯罪者情報データにアクセスできず,そして全国ネットワークには彼の情報がないので,彼の指紋を把握しながら初犯の人物として処理。ようやく他の州でも何度が逮捕されていることが分かった後,NRW州の内務大臣は「ベルリンから問合せがなかったので通知しなかった」と釈明。

その間,ネットを駆使して情報豊富なワル軍団は,国境地域で一挙に空き巣を狙い,すぐに国境越えで逃げ切る。官僚主義の隙間を突いて公的な援助金をいろんな場所で貰い続ける。
ディジタルシステムなしではもう何も進まない時代に入っていることを認識しているのでしょうか。
一刻も早く,統一されたドイツのネットワークシステムを構築して欲しいものです。
ヨーロッパ諸国間のシステム構築で指導的役割を果たせるのはドイツだと,つい最近まで期待していたのですが・・・

プログラム提供元: CComment