最新パリガイド(1971年版)

青年は荒野をめざす

まずは日本から欧州に渡る

yokohama ship departureランスを含み,西ヨーロッパの国々にはビザ無しで,というか観光ビザで渡ることはできるけれども,一般旅行者が何とか手が届く渡航方法は1つしかない。
ソ連経由で行く,いわゆるシベリア・ルートだ。別に南周りの南洋ルートがあるけれども定期船ではない貨物船。船舶会社に問い合わせて渡航の可能性,出発時期,料金などを自分で調べなければならない。

アンカレッジ経由の飛行機は高嶺の花。横浜からナホトカまで船で一泊,ハバロフクスクまで列車,そしてモスクワまで飛行機で飛んで宿泊,その後ウィーンまたはヘルシンキまで飛んで到着終了するコースが一般的。
旅行会社で購入でき,ソ連の通過ビザも含まれたパッケージなので,自分で用意する必要最低限のものはパスポートと旅行小切手ということになる。
ナホトカからずっと列車で行くこともできるが,1週間以上要するので,料金はわずかしか安くならない。
値段は旅行代理店によって多少の差があり,1971年1月現在,片道11-13万円ぐらいだ。

パリ行き前の情報集め

東京ならば,まずは赤坂にあるフランス観光局に行こう。
質問があれば事務局の職員に尋ねることもできるし,いろんなパンフレット等が置いてあるのでそれだけでも結構有り難い知識を得ることができる。
最初から長期滞在を目的にビザを取得する人はフランス大使館・領事館で申請。

パリに着いたら

パリが欧州の他国の首都と異なる点は,フランスの中心となる都市はパリしかないということだ。北のベルギー,ルクセンブルク,ドイツ,東のドイツ,スイス,南のイタリア,スペインなどからフランスに車で入った途端,または英国海峡から船で港に到着した後の主要道路など,どこの国境でもすぐに,「この道路をただただ真っ直ぐに行けばパリに着きますよ,という」という道路標識 "Paris" が目に付く。
500キロ以上も離れた地点で,矢印で示されたこれほど多くの標識はパリを置いて他にないだろう。
例えばヒッチハイクでソ連から東欧を抜け,フランス側の国境検査を終えて目に入る "Paris" という標識は,到着気分で心を高めるはずだ。自動車にしろ,鉄道にしろ,日本国籍の旅行者が国境検査で調べられるのは荷物と所持金額。往復,またはフランス出国の切符についても訊かれるが,無くても入国はできる。

plan de paris 1鉄道ならばどこから来てもパリが終着駅になるが,パリには「パリ中央駅」と呼ばれるようなひとつの駅はない。
東西南北に位置する隣国とを結ぶ6つの主要駅(Gare du Nord, Gare de l'Est, Gare de Lyon, Gare d'Austerlitz, Gare Montparnasse, Gare Saint-Lazare)がパリの中央駅に相当する。
ウィーンからの列車は東駅(Gare de l'Est)が終着駅だ。

日本からホテルを予約している人は少ないと思うので,まずは宿探し。観光案内所で探してもらうか,自分で歩いて探すことになるけれども,東駅の構内にある観光案内所よりもシャンゼリゼ通りの観光案内所の方がいろんな面でお奨めだ。
パリには,フランスの田舎町や南欧諸国のような,ペンションと呼ばれる安宿はほとんどないので,観光局ではとりあえず1つ星ホテルを見つけてもらい,その後自分で星無しホテルを探せばいいと思う。
地区にもよるけれども20フラン以下で結構ある(1フラン,75円,1971年3月現在)。
ただ,星無し宿の室内設備は洗面用の水道だけ。トイレは廊下,共同シャワーもホテル内にひとつしかないところがほとんどなので,ユースホステルより少しましな個室,と考えたほうがいい。
因みにフランスのユースは会員証無しでも宿泊できるけれども,パリのユースは中心市街よりも離れているし,何より昼間追い出されるのが不便だ。

パリの地下鉄の乗り方をマスター

paris metro w800まずは便利な交通手段,パリの地下鉄「Metropolitain」の切符と地図を購入しよう。
地下鉄ならパリ市内は一律料金。1方向,何度乗り換えても1枚で行ける。バスは距離に応じてパリ市内でも2枚要することがある。
いずれにしても同じ切符で共通なので,十枚綴りの切符を購入して常時持っておくと便利だ。
窓口で「キャルネ」と言って指を10本示せば分かってもらえるはず。1等と2等があり,通常は何も云わなくても2等の切符を出されるけれども,念を押したいならば「ドゥージィエームクラス」と言ってもいいだろう。値段は9フラン
地図は駅構内の店で写真のようなベストセラーの地図 "Plan de Paris" を探そう。

この地図帳はパリに一定期間滞在するならば必須。いつもポケットに入れておけば,パリ市内ならばどこでも簡単にたどり着けるはずだ。

パリの地理感を掴む

パリに初めて足を踏み入れると感動を覚えるほど魅力にあふれていると思うけれども,東京や大阪のような都会の雰囲気は感じない。高架鉄道と地下鉄の交通網があるせいか,街路や建築物は大きく異なってもロンドンの方が日本の都会に近い感じだ。

parismap parinetcom直径10キロにも満たない,東京の山手線の中ぐらいの面積のパリは,整然とした都市だ。町の基本的な構成を理解しておくと,移動が効率的になるだけではなく,歩き回ることがとても楽しくなるはずだ。

セーヌ川の中ノ島,シテ島がパリの発祥地。そのシテからカタツムリ状に右側に順繰りに廻る20区で構成され,セーヌの北側一帯が右岸 „Rive Droite“,南側一帯が左岸 „Rive Gauche“と呼ばれ,雰囲気もまず2つに分かれる。

ノートルダム寺院の前に零地点があり,目印に銅版が置かれている。パリからフランス全土への距離はここを基点として測定されている。

さて,地図を見て道路にたどり着いたら住所に当たる建物の番号だ。道路の角には必ず通り名の標識があり,通りの片方が奇数番号,反対側が偶数,そして通り名の番号はすべてセーヌ川から始まっているので,住所だけで簡単にたどり着けることが分かってもらえると思う。

パリの道路と建築物

パリに限らず,フランスのほとんどの道路は,Boulevard,Avenue,Rue という接頭語が付いている。
パリの場合,Boulevard と Avenue は広い道路で,パリの中心から放射状または東西南北にパリ市境となる周辺地域まで真っ直ぐに伸びている。
主な道路は,右岸の中心の南北を結ぶセバストポール通り(Boulevard de Sébastopol),左岸の南北を結ぶサンミッシェル通り(Boulevard Saint-Michel),セーヌ川沿いに右岸を走るリヴォリ通り(Rue de Rivoli),そして左岸のサンジェルマン通り(Boulevard Saint-Germain)だ。

そして,パリの中心のシテ島,サンルイ島,ノートルダム教会,パリ市役所(Hôtel de Ville)などに加え,方向感覚の大きな助けの目印となる,モンマルトルの丘のサクレキュール寺院(北端),現在建設中のモンパルナス駅のタワー(南),凱旋門とエッフェル塔(西),バスティーユ(東)などが何となく頭の中に入っていると,もうおのぼりさんは卒業したも同然。

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