28 2019リアからトルコ,ギリシャを通る地上ルートとは別に,地中海に出てから西ヨーロッパに渡ることを試みる難民グループが絶えることはない。
アフリカ人の難民の場合,まず北アフリカの地中海沿岸にたどり着いた後,地中海を渡ることを試みるわけですが,最近はモロッコ,アルジェリア,チュニジア,エジプトなどよりもリビアからイタリア南端を目指すルートが多いようです。

そこで地中海という,西ヨーロッパとの自然の境界域があるわけですが,この広い海の警備に関する規律が定まっていないこともあり,特に難民が増え始めた2015年から問題が絶えません。
勿論それ以前も,西ヨーロッパに(不法に)渡ることを試みる人たちは多く,1993年から現在まで地中海で溺れ死んだ難民は約2万人といわれています。

先週,地中海をさまよう難民40名を救助したドイツNGO団体の船舶 "See Watch 3" のカローラ・ラケッテ船長(ドイツ人女性)が,イタリア港への寄港を拒否されたにもかかわらず入港し,直後に逮捕された事件で,「地中海を漂う難民」への対策について新たな議論が沸いています。

シェンゲン協定とダブリン規約

EU圏内における国境検査のない人間の自由な移動およびや税関検査のないモノの自由な売買が取り決められたシェンゲン協定に併せ,EU圏内に難民希望者が入国した場合の対処を定めたダブリン規約があります。

EU圏との境界で最も大きく,唯一の境界とも云えるのが地中海。といっても広い地中海ですから,多くの人を乗せた小さなボートで目指す西欧は,一番近い南スペイン,南イタリア,そしてギリシャです。フランスはやはり遠いので自力でたどり着くのは困難なのです。
ダブリン協定では,不法入国者がEU圏に入って来た場合,最初に入国した国が責任を持って,人権尊重した上で,送還,難民申請,保護などの手続きを行うことが定められています。しかし,難民申請を行った人が国境検査のないシェンゲン協定を利用して,(より良い生活を求めて)英国,ドイツ,北欧諸国などに移動した場合,最初に難民申請を行った国に送還する権利があるため,当然ながら南スペイン,イタリア,ギリシャなどには難民があふれることになり,実際,そのような状況が長年続いています。

アフリカ諸国や中近東諸国から難民が西ヨーロッパに向かう傾向は30年ほど前からあるのですが,アフガニスタン紛争,イラク戦争,さらに近年のシリア紛争によって難民が急激に増えたため,西ヨーロッパ諸国の負担は大きくなっています。
それでも経済力のある西ヨーロッパおよび中欧・北欧諸国は,イタリア,スペイン,ギリシャなどの経済負担を和らげるために支援すると共に,入欧自体を防ぐためにトルコに難民支援費を供給し,またモロッコ,チュニジア,リビアなどとも度々,ヨーロッパに不法出国者を送らない策について話し合っています。

また,アフリカ人や中近東人がなんとか西ヨーロッパにたどり着いても,難民申請を受け入れる国は,決められた限られた国だけなのですが,強制送還自体が困難なため,ヨーロッパ大陸に渡りさえすれば,少なくとも自国よりはましな生活ができ,そういう人たちが溢れているのが現状なわけです。
因みにドイツでは2018年までに難民申請を拒否され,強制送還を命令された人は約7万人,内実際に強制送還された人はわずか数百人なので,他の国も似たような状況だと思われます。

地中海で危険にさらされている人たちへの対応

refugee boat w450h250イタリアやスペインの海上警備隊は,船舶が不法に近づいてくると追い出す行為を行ない,海で溺れている人でない限り,ボートなどは基本的に救助することは行いません。
また,国境警備なので,自国の領域から離れた地中海に行くこともありません。

つまり,地中海の真ん中でボートが転覆して溺れ死ぬ人が増えても救助する国がいないため,私立団体,NGO団体などが海で危険にさらされている人たちを救助するのですが,このような救助行為は当然ながら南欧諸国から歓迎されていません。

そのような状況の中,イタリアのサルヴィーニ内務大臣が,ダブリン規約の違反承知で難民受入れ拒否を発表し,つい数週間前も行き場を失った救助船がスペインに助けてもらったばかり。

今回の Sea Watch 3 も,40名を救助した後,リビアに戻す方法もあったわけですが,リビアの非人間的な難民収容所に戻るぐらいなら自殺するという人たちもいて,リビアの事情は Sea Watch 3 のスタッフもよく知っているため,イタリアへの寄港の打診を2週間続けていたのですが,許可は得られず,最終的に無許可の寄港,そして船長逮捕ということになったわけです。


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