頑なにマスクの効果を認めないドイツ,イェナを除いて

だまだ,これでも頑なにマスクの効用を信じない,信じたくないドイツ,イェナを除いて

数週間ぐらい前から連日テーマになっているマスクの着用。ドイツ全土に外出制限令が出された今でも医療関係者以外のマスク着用の効果をドイツは公式に認めていない。
「禁止はしないけど,逆効果もありますよ,マスクで安心感を得られるのならどうぞ」という感じだ。

チェコ共和国では3月中旬から公の場ではマスク着用が義務化され,オーストリアでも屋外ではすべての人にマスク着用を推奨,スーパーなどの中では4月から義務化された。
義務化ではなくても,ドイツでもせめて推奨したら,と思うけれども,それもない。ないどころか,ドイツのメディア(ラジオ,テレビ,新聞)を見聞きする限り,マスク着用を強く推奨している専門家(ウイルス学者,医師,医療評論家など)は1割ぐらいだろうか。
某ウイルス専門学者は,「もし医療用マスクを持っていたら医療関係者に寄付してください」と言っていた。

多くの専門家や政治家がマスク着用の効果をある程度は認めながらも,逆効果の方を強めて語るから,一般人の間にも否定的な意見が留まるのかもしれない。
逆効果を強調するいくつかの記事には,鼻が丸出しでマスクをしているラシェットNRW州相の写真を大きく載せ,「ほら,こんなになるんだよ」という感じだ。

  • 薬用製品としての市販のマスクでも,病人がどうしても外出しなければならない場合に,他人にうつすことを妨げる効果しかない。
  • 政府も専門家もまずWHOの見解を元に公表する意見や政策を決める。WHOは布マスクの効用を認めていない。
  • マスク着用による感染リスク低減の実証データはない(ロベルト・コッホ研究所)
  • 医療用マスク(FFP1, FFP2, FFP3, N95)の中級以上のマスクでないと,マイクロサイズのコロナウイルスを妨げることはできない。
    これらのFFPマスクは現在,一般の人に廻せるほどの供給は望めないし,得られたとしても一般の人は30分も着用すると苦しくなる。
  • 普通のガーゼや布のマスクは,風邪をひいている人,またはコロナ感染者などがどうしても外に出る必要がある場合は,他人への感染防止のために,着用を推薦するけれども,健康な人は不要だし,マスクには予防効果もない。
  • 普通のマスクはしばらくすると自分の息で湿気を帯び始め,より不衛生になるなど,マスクの着用・取り外し方法などを正しく行わないと逆効果になる。
  • マスクを着用すると安心感が増すので,心理的に他人と接触することに躊躇しなくなる。
  • 人は無意識に毎日300回ほど鼻や口に手をあてる。マスクをすると鼻や口に直接手を触れることがないから予防になると思うかもしれないけれども,たびたびマスクに手をかけると逆に不衛生。

以上が,連日聞こえてくる政治家やドイツ政府アドバイザーである専門家の意見の概要

ウイルス学者へのインタビューでは,マスク着用に関する質問が続くのでちょっと切れてしまったのか「マスク,マスクという論議は意味がないので止めてほしい。とにかく現時点では不要だし,話す必要もない。それよりも,手をよく洗うことと他人と距離を保つこと,これに尽きる」と声を荒げ始めた。

学者の見解なので正論だろうとは認めつつ,潜伏期にも感染することが分かっているコロナウイルスを考えると「健康だから不要」「症状が出たからマスク着用」とはならない気もする。

オーストリアのクルツ首相は,「手洗いの習慣やソーシャルディスタンスが最も重要だけれども,それを補助する形でマスク着用が少しでも感染予防になるのならば実践するべきだと思う。死亡者はこれからも必ず増えるでしょう。しかし,ひとりでも被害者を減らすためにみんなができることをやるべきなのです」と言っている。

100歩譲って,効果が大きくないことを認めたとしても,わずかでも効果が期待できるのであれば,ドイツ全土では結果的にかなりの違いが出るからマスク着用の推奨をしよう,という考えになぜならないのか不思議でならない。

また,行動を起こすのが遅すぎたと批判されている米国や英国においても,数多くの市民ボランティアがマスク作りに奉仕しているのに比較すると,ドイツはあまりにも少ない。
そもそもマスクが手に入らないから,マスクが市場に出回ったら買い溜めされる恐れがあるから,十分なマスク供給が確保されるまでマスク効果を認めたくないのだろうと思われても仕方がない。

徐々に進む自治体独自や個人の防衛策

そのような中,ドイツ再統一とほぼ同時にハイテクの道を目指し,現在でも旧東独だけではなく欧州規模でも最先端技術の学術センター,そしてカール・ツァイス社の拠点として知られるテューリンゲン州の大学都市イェナ(Jena)市は全市民に,公共の場でのマスク着用を義務化した。

もちろん他の地方でも,以前と比較すると格段に多くの人たちがマスクをしている。
まだ少ないとはいえ,職場や工場などで全従業員にマスク着用を義務化する企業も増え始めてはいる。
しかし一般市民は,「自己責任でどうぞ」と政治家や専門家にいわれても,マスクを購入することはできない。どこにもないのだから。
ドラッグストアーで,「あのぉ,トイレットペーパーやマスクはいつ入ってくるのですか」と訊いた折,「マスクの納入予定はありません。トイレットペーパーは明日来ますよ」とのことだっとので,翌朝子供を送って手に入れた。
マスクはともなく,「買い溜め不要,食料もトイレットペーパーも十分あります」と大臣が再三訴えていたので真面目に聞いている内にトイレットペーパーがすっかり消え,1週間ぐらい後に改めて尋ねた返事。危機一髪だった。

それにしても,布マスクの大量生産が即,数日でできないのが素人考えでは不思議でならない。
日本などの産業国でも同じだと思うけれども,もう20年以上も前に,ドイツでテクスタイル工場を2社ほど訪れたことがある。
コンピュータによるデザイン作製自体は見なかったけれども,デザイン変更を即行い,その場で数十メートル平米の自動織機が超スピードで織り始めた。その後の細かい寸法通りの切り取り作業も高速自動運転だったので,マスクぐらい1日で100万枚単位ができそうな気がするのだが・・・

そういうことを考えている間,マスク生産を始めた小企業とサプライヤーが薬用製品としての条件を満たしていないとして,警告を受け生産中止になったニュースを読んだ。中国から独自にマスク輸入を試みたフリーランサーもドイツ法規の問題に直面。
マスク売買詐欺もあるようなので管理監督の必要性は認めても,きちんとしているドイツを褒めるべきか,融通の無さを嘆くべきか。

 コロナに「マスクは無意味じゃない」明確な根拠 - 直接防止効果はさておき社会のために必要だ(東洋経済)

以上の記事を書いたのは4月2日。そして昨日,4月22日,来週の月曜日(4月6日)からドイツ全土で公共交通機関を利用するときや店舗など人が多い場所に入るときはマスク着用が義務化された!。これまで,口裏を合わせたかのように多くの専門家が繰り返し言い続けてきた「マスクは百害有って一利なし」に対する弁明はなかったけれども,保健大臣は「我々の見解に誤りがあった」と素直に認めた。

ところで,イェナ市(人口: 11万人)が,市民にマスクを配布したり,作製方法などを説明しながら,独自にマスク着用義務を導入した時期の4月10日時点で,新型コロナ感染者は155名だった。そして,昨日の4月22日時点で155名。その間,ひとりも感染者は増えていなかった。
イタリア国内での感染者がまだ千名ぐらいだったころ,イェナ市の市長はすでに危機対応の専門チームを結成し,ドイツの他の自治体などから冷笑されていたという。
今,急に,先見の明を持った市として名誉を挽回した。


咳をしたときに拡散する菌の空気分布の様子

プログラム提供元: CComment