ドイツ語とドイツ人


ドイツ語を学ぶ,といっても,語学学校や大学キャンパスで過ごす時間だけではなく,「書を捨てよ,町へ出よ」の精神の人ならば,ローカル市民との接触のなかでもドイツ語を多く学ぶかもしれません。
となると,やはり標準語。時代を経るにつれ,方言は少なくなったとはいえ,まだまだドイツ国内でも多くのドイツ語があり,スイス,オーストリア,ルクセンブルクなどのドイツ語は,さらにかなり異なります。

語学学習で最も大切な耳の訓練には,日常話されているドイツ語を意識して聞き取り,聞き分け,特徴を掴むことを習慣にすると,ドイツ語力はグンと伸びるはずです。
人にもよると思いますが,秀才でも鈍才でもなく,ふつうの頭を持った30才以下の若者ならば新しい言語の聞き取り力はまだあるので,語学学習を主としたドイツ滞在をする際は,行き先のドイツ語の特徴も参考にした上で場所を選んでほしいと思います。

ショルツ首相は聞き分けられませんが,シュミット元首相の語りは生粋のハンブルク人であることが私でも分かりました。
ドイツの方言で一番知られているのは,まずバイエルン。続いて,シュヴァーベンでしょうか。ひとくちにシュヴァーベンといっても,シュトゥットガルト周辺や以北,そして黒い森のバーデン地方など,かなり異なる特徴を持っています(注:正確にはバーデンはバーディッシュでシュヴァーベンとは別)。

標準ドイツ語というか,正統なドイツ語(Hochdeutsch)はハノーファー地方で話されているドイツ語だといわれます。
確かに,友人の両親もハノーファー生まれのハノーファー人は,初めて聞いたときから,憎らしいほど,ウンと頷くほどの素晴らしいドイツ語を話します。内容の違いは理解出来ないので,響きだけですが・・

ドイツ語は,日本語のように,東京語が標準語という風にはならないので,ベルリン語が標準語にはなりません。
今は,東西ドイツ・東西ベルリンが統合され,外からの移民(?)も一挙に増えたためベルリン人は少数派だと思いますが,生粋のベルリン人はプロイセンを基にした強い方言を話します。
まぁでも,江戸っ子と似ている感じもなぜかときどきします。結構べらんめぇ調なのです。てまえがてめぇになるように,子音の次にAEが続く語彙はすべて「(小さな)ぇ」に聞こえるのは,江戸っ子のように気が短く,早く言いたいからではないのか,と勘ぐりたくなります。

バイエルンなども,日本の関西弁と同様,というか関西人と同様で,バイエルン語をどこでも開けっ放しで話しているようにみえながら,実は外の人間に対しては標準語で話す努力をしているのだけれども,巻き舌のRなど,バイエルン人であることが一発で分かる強い特徴(訛り)があります。

しかし,日本の場合,方言で話したり訛りがあったりすると地方出身であることがばれて恥ずかしいので標準語で話す,という印象があるのですが,多くのドイツ人はそのような考えはほとんど持っていないと思います。
連邦国家になる前から,ナチスのドイツ大帝国への叫びにもかかわらず,いろんな意味でそれぞれの地方のプライド(独立心)は高かったのではないでしょうか。

先日もドイツ人が不満げに叫んでいました。
「ドイツでも書物に書いてあるドイツ人はプロイセン人。だから,外国でドイツ人について語るときも,本当はプロイセン人のことを話しているんだよ。彼らが言うドイツ人の特徴はプロイセン人,ビスマルクだもんなぁ。ドイツ人観じゃないよ。そしてまた,プライド高いバイエルン人も有名になったから,外国人は,バイエルン人なのにドイツ人と勘違いしている。」

 

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