日本食レストランで起業

ドイツで日本食レストランを開業する(6)

kitchen開業資金と必要経費

ドイツの飲食店開業の手引きによると,総売上高を100%とした場合の標準的な経費分類は次のようになります

10% - 家賃
10% - 光熱費
  2% - 各種税金(営業税など)
  6% - 金利
  6% - 経営・営業経費
  4% - 広告
17% - 人件費
30% - 材料費

売上額から上記の経費を引いた残りの15%が利益。つまり,売上からの経費が上記のように収まって15%の利益が出る経営が健全といわれています。日本の場合もそうなのでしょうか。

とにかく安くの節約方針にせよ,高い品質には高い料金を支払っても良しとする価値観にせよ,流動的な経費は人件費と材料費だけです。正式に1人雇用した場合,約2000ユーロ/月の人件費というのが目安です。自分の調理助手 "Küchenhilfe" として1人雇うか,準備,洗い場,掃除などの部分のみパートタイムにするか,いろいろなケースで考えられたらいいでしょう。
あと,広告費なども,開店前後に大きく行い,その後は最低限の額に抑えることも考えられます。近年,ネット上ではレストラン評価で賑わっています。日本食レストランなどは,現地のグルメブロガーや新規開店に興味のある人などに通知したりする簡単なアプローチを介して,大きなPR効果があるような気がします。人件費に関しては,家族・仲間であれば,しばらくの間は無給または最低額にして抑えることも可能でしょう。
そして原価の材料費。米,味噌,醤油,調味料をはじめとする和食に欠かせない食材の値段は,数十年前と同じ位か,もっと安いほどです。しかし,新鮮な魚介類や(和食に用いる)野菜などは高く,季節によっても値段は数倍ほども変化するのは普通です。ですから,日本の高級和食レベルをドイツでも維持・発揮したい,志の高いシェフの日本食レストランは大変かも知れません。肉は日本よりも安い。余談ですが食肉に関しては,ドイツ人にとっては豚肉が主ですが,フランス人は牛肉を好んで食するので,日本食ファン以外の顧客も増やしたい場合はそのような顧慮も必要です。

また一番注意を要するのが19%という付加価値税です。メニューの価格はすべて税込み表示となりますので,実際の収入は売上から2割引いた額になることを,いつも頭に入れておきましょう。

客席

日本からドイツを訪問する人たちは,「ドイツは何もかも大きい,男性用トイレも洗面台も高い,出入り口のドアは重い」と言い,ドイツから日本に一時帰国する人たちは逆の感想を述べます。同じように,ドイツでも,日本食レストランの内装などは和風にしても,テーブルや椅子のサイズ・配置・間隔などはドイツの標準を考慮する必要があります。
まぁ,こちらで調達するのであれば,サイズに関しては問題はありませんが一応の前知識として。

食事をするテーブルの幅と奥行き: 70 cm
テーブルの高さ: 約75 cm
椅子の高さ: 約46 cm
隣りの席(テーブル)との間隔: 135 - 150 cm(サービスを行う通路)

標準サイズはなく,一応の目安に過ぎませんが,高級になるほどゆとりサイズになるのは何処も同じです。それで,値段が高い日本食レストランにもかかわらテーブル・椅子が詰まっていると,不満を感じる客が多いことになります。

灯り

ドイツに限らず,ヨーロッパでは家庭でも灯りはやわらかく,日本の人にとっては暗いと感じるほどかも知れません。日本食レストランですから,完全にドイツ風にする必要はありませんが,日本の多くの食事処はとても明るい光なので,多少やわらげたほうがいいでしょう。蛍光灯はトイレ以外は避けます。
といって,ただ暗いだけの日本食レストランもときどき見かけます。天井に大きな電燈だけを掛けるのは控えて,和の美を感じるような優しいライティングを工夫してほしいものです。欧米人は蝋燭や暖炉のようにゆらぐ光に落ち着きを感じることをヒントにしてください。


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