ドイツ・ワインの生産地
ワイン法で定められたドイツの13のワイン生産地域 デンマークに近いドイツ北端の地域でもワインが生産されていた時代もありましたが,長時間の太陽光線を必要とするワイン用ブドウの品質を,毎年安定して保つことはできず,現在ではドイツ中部以南,ほとんどは南ドイツ地方が主なワイン生産地になっています。 「ドイツ・ワインはフルーティーな味の白ワイン」というのが一般的な認識だと思いますが,総生産量の6割が白ワイン,3割が赤ワイン,1割がロゼとなっています。
もうひとつの特徴は,甘っぽい味を好むドイツ
人が多いせいか,それとも食事にワインを飲む習慣があまりないため甘いワインの生産量が多く,その味に慣れたドイ
ツ人に提供するためか,辛口ワイン(trocken)は5割弱,中辛口(halbtrocken)は2割強,そして3割以上が甘口(lieblich)となっています。
個人的には中辛口でも,イタリアやフランスのワインと比較すると甘い感じがするので,半分ぐらいが甘い(品質が高いとフルーティーという言い方もできますが)という印象です。
ドイツのワイン生産地域はワイン法により,以下の13地域に定められています。
総面積は10万2千ヘクタール,最も広い地域はライン・ヘッセン地方の2万6500ヘクタール,続くプファルツ地方(2万3400ヘクタール)のバード・デュルクハイム(Bad Dürkheim)では世界最大のワイン祭りが催されます。 また,北緯51度に位置するSaale-Unstrut(ザーレ・ウンシュトゥルート)は,長年の歴史を有するワイン用ブドウ栽培地としては世界北端の地域です。
Ahr(アール: 540 ha)
この小さな地域を流れるアール川(ライン河の支流)沿いの急斜面を見て,古代ローマ人は「ここなら葡萄を栽培できる」と確信したのかも知れません。 ワインの8割以上が赤ワイン(Blauer Spätburgunder, Blauer Portugieser)です。残りの白ワインは,リースリングとミュラー・テュルガウとなっています。ライン河の暖かさと長い日照時間に恵まれた葡萄で生産されるアール産シュペートブルグンダーの愛好家は多いようです。
お奨め
Die Ahrtalbahn(アールタールバーン) ライン・モーゼル交通局(Verkehrsbund Rhein-Mosel)に属する電車ですが,ボン(Bonn)およびボンとコブレンツの間にあるレマーゲン(Remagen)から,ほとんどのワイン生産地を廻る,まさにワイン電車です。
所要時間: 約30分 www.vrm-info.de
Baden(バーデン: 1万5800 ha)
北はハイデルベルク近郊から南はボーデンゼー湖まで,フランス国境沿いに南北に伸びるドイツ最南端,そして最長のワイン栽培地域です。
9つの地域(Bergstraße, Bodensee, Breisgau, Kaiserstuhl, Kraichgau, Markgräflerland,Ortenau, Tauberfranken, Tuniberg)の中でも最も有名なのは,見渡す限り葡萄畑のカイザーシュトゥール(Kaiserstuhl)。フライブルクの西方10キロ,小さな地域ながら赤ワイン(シュペートブルグンダー)の品質の高さで知られる個人経営の醸造所が数多いので,田舎町の宿で郷土料理と品質ワインを同時に楽しむ一夜を過ごすのも一案です。
Franken(フランケン: 6100 ha)
バイエルン州の北に位置するフランケン地方のフランケンワインのトレードマークはボックスボイテル,1200年の歴史を有しています。バイエルン州ながら,フランケンの人たちはワインを好む人が多く,ロマンチック街道にも入っている観光コースですが,多くの観光客はヴュルツブルクなど大きな都市に向かうので,ぜひフランケンの田舎で地ワインやワイン祭りを体験したいものです。
8割が白ワインで,辛口ワインではドイツで最も好まれているワインだと思います。
主な品種は,ジルヴァーナーとミュラー・トゥルガウです。
Hessische Bergstraße(ヘシッシェ・ベルクシュトラッセ: 450 ha)
フランクフルト南部からハイデルベルクに続く,ドイツで最も小さなワイン生産地の一帯は春が早く訪れ,温暖な一帯のため,ワイン栽培用の葡萄だけではなく,レンギョウ(連翹
),桜,杏,木蓮,アーモンドの木なども育つ地域です。
リースリング,ミュラー・トゥルガウ,グラウブルグンダー,シュペートブルグンダー,いずれも強い芳香を持っています。
Mittelrhein(ミッテルライン: 460 ha)
ライン下りで有名なローレライの前後の一帯(Bingen と Koblenz の間)で,船から見渡すライン河の両側に広がる急斜面の葡萄畑です。
ワイン栽培地訪問を1箇所に絞るならばバハラッハ(Bacharach),バート・バカラックの祖先がいるかも知れませんよ :-)
年季が入った木骨家屋と急斜面のワイン畑のロマンチックな景観。
Mosel(モーゼル: 8800 ha)
Mosel-Saar-Ruwer とも呼ばれます。トリアから続くモーゼル川沿いに古代ローマ人がワイン用の葡萄栽培を始めたドイツ最古のワイン生産地というだけではなく,世界で最も急斜面のワイン畑,そして品質の高い白ワイン用リースリング種で広く知られるようになりました。
モーゼル・ワインがお好みのワインでなかったとしても,ワインの生産地を廻る旅ならば,ドイツで最も印象的な景観が味わえる地域だと思います。トリアからでも,コブレンツからでもモーゼル川沿いに車を走らせ,モーゼル河畔と坂の上からの両方の景観と夕陽を楽しめたら最高です。
Nahe(ナーエ: 4200 ha)
ビンゲン西側のナーエ川の小さな流域で,知る人ぞ知る質の高い3品種の白ワイン(リースリング 25%,ミュラー・テュルガウ 16%,ジルヴァーナー)が栽培されています。
訪問したい町: バード・クロイツナッハ(Bad Kreuznach),バード・ミュンスター(Bad Münster am Stein),イーダー・オーバーシュタイン(Idar-Oberstein)(バードという名があるように,空気のきれいな保養地としても知られています)
Pfalz(プファルツ: 2万3000 ha)
オレンジやレモンの木があるドイツ唯一の地域と呼ばれるほどの温暖な気候なので,ワイン用のブドウ栽培に適しています。19世紀,バイエルンに所属したいたころ,ルードヴィッヒ一世はこの地方をとても気に入っていたそうです。
リースリング(20%),ミュラー・テュルガウ(14%),そして強味で濃い色のドーンフェルダー(12%)が栽培されています。
最も有名なワイン産地はダイデスハイム(Deidesheim)
Rheingau(ラインガウ: 3100 ha)
ユネスコ世界文化遺産に指定されているラインガウですが,昔からワイン栽培を担って来た修道院の建築様式も一見の価値があります。
多くの観光客がライン下りで立ち寄るリューデスハイム(Rüdesheim)一帯もラインガウ,修道院ならエーバーバッハ修道院(Kloster Eberbach),お城ならヨハネスベルク城(Schloss Johannisberg)
Rheinhessen (ラインヘッセン: 2万6500 ha)
ドイツ全土のワイン栽培地の約4分の1を占める,ドイツ最大の広さとドイツ最大の生産量を誇るラインヘッセンは,2008年からワイン首都マインツと共に一躍有名になりました。
木骨家屋およびゴシックの建築物で知られるオッペンハイム(Oppenheim)には,地下5階に渡る迷路のようなワインケラーがあります。
Saale-Unstrut(ザーレ・ウンシュトゥルート: 750 ha)
ドイツ最北のワイン用ブドウ栽培地。1000年以上の歴史を持つ畑では,ミュラー・テュルガウ(22%),ヴァイスブルグンダー(12%),ジィルヴァーナー(9%)が栽培されていま
す。
お奨め3ヶ所: フライブルク(Freyburg),ナウムブルク(Naumburg),ヴァイセンフェルス(Weißenfels
Württemberg(ヴュルテンベルク: 1万1400 ha)
広大なライン河とは違った趣のある,ネッカー川は南ドイツの住民にはもちろん,ドイツ旅行をする日本人にもハイデルベルクやテュービンゲンなどでお馴染みだと思います。中世の都市とワイン畑や黒い森の深い緑が良く似合い,芸術家だけではなく歴史上でも多くの人たちがそれぞれの魅了を記しています。
フルーティーな赤ワイン,トローリンガー(Trollinger)は南ドイツの人たちに最も身近なワインで,栽培地も全体の4分の1を占め,リースリング(20%)よりも多く栽培されています。また,黒いリースリング,シュヴァルツリースリング(Schwarzriesling)も17%ほど栽培され,赤ワイン生産の割合が白ワインよりも高いのは,ドイツではヴュルテンベルクとアールだけです。
お奨めの町: ルートヴィックスブルク(Ludwigsburg)