ドイツのメディア
ドイツの新聞
Zeitungen in Deutschland
ドイツは新聞の国,ドイツ人は新聞好き,といわれます。
世界で初めて日刊新聞が発行されたのもドイツです。
ライプツィッヒの印刷・出版業者,リッチュ(Timotheus Ritzsch)によって,1650年7月1日,毎日発行する "Zeitung"(新聞)という名称の印刷物が誕生しました。
ただ,世界のニュースを伝える印刷物としての新聞はストラスブール(フランス)で生まれ,カロルス(Johann Carolus)が1605年に発行を始めたのが世界初といわれています。
ところで,日本に行ったドイツ人から「日本人は読書家だねぇ。電車に乗ると多くの人たちが新聞や雑誌を読んでいる。割合的にこんなに多くの人たちはドイツにはいないよ」と日本でのびっくりぶりを報告されたことがあります。ただ,70年代のことなので最近の状況は分かりませんが・・・
それでもドイツは新聞の国
現在のドイツの日刊新聞は351紙,地方の小部数発行の1528紙を含めると,毎日1680万部が印刷されています。これらに加え,週刊誌が21誌(発行部数: 170万部),日曜版が7紙(発行部数: 290万部)あるので,14才以上の1000人に306部が渡っている計算になります。
約4400万人の人たちが毎週数回は(印刷された)新聞を読んでいますが,無料新聞などを含むローカル紙の読者はわずかながら女性が多く,逆に金を出して新聞を求める購入者は男性が少し上回っています。
因みにヨーロッパでは,2500紙,約8500万部が発行されています。
イタリア(111紙),スペイン(110紙),英国(94紙),フランス(84紙),チェコ(79紙),スウェーデン(75紙),ノルウェー(74紙),ブルガリア(61紙),フィンランド(46紙),ポーランド(35紙),デンマーク(30紙),ハンガリー(30紙),オランダ(28紙),オーストリア(15紙),アイルランド(9紙)
8300万近くの人口を考慮にいれても,やはりドイツは新聞の国といえそうです。
中年以上は紙の媒体,若者はオンライン
印刷された新聞を好んで読む層は年齢に沿って増え,50才以上では7割以上の人たちが印刷新聞を読んでいますが,20-29才では半分以下の45%,14-19才では31%なので,若者の3分の2強はオンライン新聞の購読者という結果になっています。
内容的に好まれる記事は,身近な出来事やローカルニュースが最も多い86%の読者,続いてドイツ国内の政治が67%,海外の政治が55%,スポーツが44%,文化38%,経済33%,法律・学術・技術31%という順番です。
新聞を読む平均時間は39分(週末は44分)。
男性が女性よりも若干長く,50才以上の人たちは平均47分なのに対し,14-29才では平均30分です。
信頼性の高い紙媒体の新聞,フェイクニュースはオンライン
新聞マーケティング協会(ZMG: Zeitungs Marketing Gesellschaft)によると,新聞に掲載されているニュースの内容は信頼に値するという人は46%で最も多く,続いて公共テレビ放送(23%),公共ラジオ放送(10%),インターネット(8%),民間テレビ・ラジオ放送(3%)という結果が出ています。
しかし,発行部数は減り続け,2017年度は1470万部(2012年: 1840万部,2006年: 2100万部,1991年: 2730万部),さらなる下降が続く見込みです。発行部数の減少に伴い総売上高も過去数年は毎年約1%落ち続けており,2016年度は約75億ユーロとなっています。
内訳でも,少し古いデータですが,グラフのように,ほとんどはスキャンダル新聞の Bild です。日刊新聞に限らず,多くの新聞・雑誌社は近年オンライン出版に力を入れ始めていますが,経営の助けにはあまりなっていないようです。日刊新聞の出版社によっては,定期購読を勧めるセールスキャンペーンが功を奏して,売上部数を増やしている会社もありますが,広告収入が減り続けているため,最終的にはマイナスが続いているようです。
ただ,新聞に掲載されている広告は信頼するという人たちは多いので,新聞広告の訴求効果は高いというのも事実です。
発行部数が最も多いドイツの3大日刊新聞は,Bild-Zeitung,Süddeutsche Zeitung,Frankfurter Allgemeine Zeitung(FAZ)ですが,評価も高い全国新聞のフランクフルター・アルゲマイネ社にしても2014年から2015年にかけて1500名以上の従業員が削減されましたが,半分ほどは編集スタッフでした。
時代のキーワードはオンラインと国際性
ドイツ新聞発行連邦団体(BDZV: Bundesverbands Deutscher Zeitungsverleger)によると,1996年にはまだ(すでに?)41紙あったインターネット新聞が2014年には662紙に増え,読者数と共にまだまだ確実に増えるようです。
また現在,ドイツで発行されている外国語の新聞は125紙。英国・米国系の英語新聞が勝ってはいますが,当然ながら在独外国人の人口を反映し,トルコ新聞 "Hürriyet" などは毎日2万3000部を売り上げる日刊新聞に成長しています。
数年後には中華新聞がトップを飾るかもしれません。
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