ドイツのメディア
ドイツの雑誌
Zeitschriften in Deutschland
週刊誌の世界は,大きく分けると,売れるジャンルは世界共通かも知れません。(ちょっと古いデータですが)左のグラフは個別の雑誌の売上におけるドイツ国内トップ25誌です。
① テレビ番組
② 読みやすい総合雑誌
③ 読み応えのある政治・経済が中心
④ 女性雑誌
⑤ 自動車・モータースポーツ
⑥ 健康・旅行・ファッション・映画・スターなど
ここまで(25位)見ると,断然テレビ番組雑誌が独占しているように思えますが,実は自動車・モータースポーツがトップで雑誌の全発行部数の20.8%,続く20.6%がテレビやラジオなどの番組雑誌となっています。その後に,女性週刊誌(10.3%),住まいと庭(10.2%),ニュースジャーナル誌(7.7%),女性月刊誌(6.3%)と続きます。
ドイツでは年間1500種類の定期雑誌が発行されていますが,20年前より約500誌増えています。ディジタル印刷技術の進歩により,部数が少なくても割安で印刷できるようになり,また多様になった個人の趣向を反映して雑誌の種類は増え続けていますが,発行総部数は毎年少なくなっています。
2017年度に発刊した新しい雑誌は87誌,対して廃刊された雑誌は53誌,2001年度の1178誌に対して35%も多種の雑誌が発行されています。
ニュース雑誌では,以前までは大学生のバイブルのようなシュピーゲル誌の独占でしたが,20余年前にフォーカスが発行されてから,ようやく競合ジャーナルが出てきた感じです。
最近は,列車内でのビジネスマンも席につくなりノートブックを広げる人が多いですが,しばらく前までは全国新聞または,雑誌としては,Der Spiegel, Der Focus, Die Wirtschaftswoche, Der Stern などが目につきました。
やはり,ニュース誌に限らず,年々日々,ほとんどの週刊誌の実販売数は落ち,発行部数を伸ばしているのはわずか数誌。ここでもテレビ番組と女性雑誌ですが,その中で「田舎生活の魅力」専門誌が成長を続けていると言います。先日も,都会生活者が増えているのに何故?という感じで,田舎指向のトレンドがテレビで議論されていました。都会に生活して,田舎に住む気などないのに,そういう田舎・緑・庭の手入れ・家の改築など,自然と木の匂いを感じる雑誌を読む人たちが多いことが紹介されていました。
大多数の企業人に相当する,中小企業に従事しているミドルクラスが購読している週刊誌
Der Spiegel
パリから来た(大阪の)友人が「ドイツ人はやっぱインテリやなぁ。むずかしそうなことがびっしり書いてあるやん。フランスのL'Express みたいな週刊誌やろうけど,やっぱフランス人かなわんで。全然ちゃう」と驚いたシュピーゲル誌(ドイツ語なので彼は勿論読めませんが)。これでも以前と比べる とページ数は減り,広告などの大きい写真ページが増えています。
いずれにしてもニュース誌としてドイツだけではなく,ヨーロッパ全土で最も 多い発行部数を有する,名高い週刊誌です。本社はハンブルク。1947年の創刊以来,指導的メディアとして着実に伸びてきたように見えますが,度々政治の スキャンダルを暴くため強い敵に阻まれながら(1962年のシュピーゲル事件が有名)報道の自由のために戦い続けてきたドイツの指導的メディアです。設立 者でジャーナリストのルドルフ・アウグシュタイン(Rudolf Augstein)が寄与した基盤が大きいといわれます。
focus
シュピーゲル誌へのニュース誌独占に対する挑戦として1993年に誕生した週刊誌ですが,競合するというよりも共存を狙って発行したようです。ブルダ財閥とも呼ばれる出版社 Burda は,数多くの新聞・雑誌を出版しているドイツのメディア王です。
フォーカス誌自らシュピーゲル誌を意識していると公言していますが,シュピーゲルが政治・経済問題の深い批評を重視しているのに対し,フォーカスは日常の問題や生活のヒントなど,やわらかくとっつきやすいテーマを主とした構成に移りつつあります。
政治的には,やや保守的,ややリベラルという評です。本社はミュンヘン。
出版者のひとりで編集長でもあるマークトヴォルト(H. Marktwort)によるコマーシャル標語 "Fakten, Fakten, Fakten"(事実)が有名。
現在50万部弱の発行部数ですが,このわずか数年(2008年以来)で3割以上も購読者が減り,編集長の解雇も議論されています。
stern
戦後まもない1948年にハノーバーで創刊,以来,写真がきれいで読みやすいシュターン誌は,木曜日はシュターンを買う日,という固定ファンがとても多いベストセラー誌でした。でした,と書くのは,近年,といってもこの20年ほど前から非常に多くの種類の週刊雑誌が発行され,人々の趣向も多様になっているからです。
グラビア雑誌なので,フォーマットも他の週刊誌よりもやや大きく,トピックスごとの写真が,ニュース性の高いものでも芸術的ですらあります。
政治的には左寄りと云われますが,分からないので何とも評の仕様がありません。
内容的には,報道写真,フォトドキュメント,フォトジャーナリズムにおいてドイツでは突出した個性を示し,毎号毎号の写真の素晴らしさで多くの人たちを弾きつけてきています。
また,ゲアハート・ハーデラー(Gerhard Haderer)という人の存在を知ったのもシュターン誌からでした。毎号,裏表紙の裏(表3)に掲載される風刺画は,鋭いテーマ性もさることながらユーモアにあふれ,絵としても非常に繊細なので,しばらくの間切り取ってファイルにしていた記憶があります。ドイツ人だと思っていたらオーストリア人でした。
Zeit Magazin
芸術や社会の傾向などを別の視点から見ているような,ニュース性を重視しないアート・アカデミックな感じの雑誌です。
Design muss da sein と云われるように,デザイン雑誌というか,記事全てをデザインで包み込み,ファッションをリードする知性を感じます。好みもありますが,分刻みの社会の動向を追いかけるように,または追いかけられるように,ニュースメディアを見聞きしても,真の深いものはいつまで経っても見えてこない気がします。そのようなメディアが溢れる中で,ZEIT MAGAZIN はとても貴重な存在です。
新聞 ZEIT の発行者である元ドイツ首相ヘルムート・シュミットの意向がどれほど反映されているのか察しかねますが,政治家でもなく知識人にも入らず,ドイツの頑固さに釘を刺し続ける頑固な95歳の賢人が何かを訴えていると想像すれば,新しいドイツ像も浮かんでくる。そんな気がしないでもありません。
Wirtschaftswoche - WiWo
証券株式や世界企業の動向を知りたい企業人にとっては購読すべき経済誌。
1926年に創刊といいますから老舗です。編集本部はデュッセルドルフ。デュッセルドルフとフランクフルトの証券取引の最新情報と分析が毎号詳しく書かれています。
リクルートを支援するために毎年掲載している500大学ランキングなども,ドイツ企業は重宝しているようです。また,時代の流れに応える形で,環境にやさしいグリーンな世界に寄与するポータルも2013年から開設しています。
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