ドイツにおける予防接種の義務化と臓器提供の奨励

14 2019 罰則無しでは徹底しない予防接種,しかし強制されると増える懐疑派

防接種に関しては,世界的にも普及して成果をあげているにもかかわらず懐疑的な人も増えているという皮肉な結果になっています。

予防接種が世界で初めて法律として制定されたのは英国の予防接種法で1853年。
天然痘に対する生後3ヶ月以内のワクチンの義務化でした。違反者には罰金を課す強制義務だったにもかかわらず徹底せず,また実際に罰金を課された人はほとんどいなかったこともあり,1871年には天然痘の流行で23000人の犠牲者が記録されています。

EU諸国内でも足並みは揃わず,予防接種が義務化されている国および予防すべき危険な伝染病の種類も国によって異なっています。
予防接種を強制すべきかどうかは意見が分かれるところですが,最近では2017年に欧州地域で麻疹が広がったことを機に予防接種の強制およびワクチンの種類を広げた国が増えています。
フランスでは昨年(2018年)から,予防接種の証明提示が保育園・幼稚園・小学校の入学時に義務化されています。
しかしドイツはまだ任意。そこでシュパーン保健大臣は,予防接種の義務化を図る意向を発表したわけです。

なぜかドナーが少ないドイツ

さらにシュパーン保健大臣は,臓器提供者を増やすための策も一歩進めたいようです。
現在は健康保険会社を介して送られてくる「臓器提供の意を表明する」ドナーカードを所持している人からに限って臓器提供を受けることが出来るのですが,それを「臓器提供を明示的に拒否していない場合は認めたものとみなす」に変えたいわけです。
「ドイツにおける臓器提供のウェイティングリストには平均1万人,そして毎年約1000人が死亡」という保健省の主張を聞くと,ごもっとも,と思いますが,なぜか緑の党が反対しています。

ドイツの臓器提供者の少なさについては,専門家の別の意見もあります。曰く,ドイツ市民に一般的な意見を聞くと「自分の臓器提供に賛成」の人たちが7割以上もいるにもかかわらず手術が少ないのは,プロセスを専門に進める組織・人,そして病院との情報交換や連携が不足しているというのです。世界一の臓器提供国家スペインには多くの専門機関があり,「拒否しない人は受諾」というような策を練らなくても,多くの人たちが積極的に提供を申し入れている国はアメリカだとのことです。

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